トム・ソーヤー的冒険?

郊外や国道沿いの田んぼを潰し、大型店やいろいろなお店が出来ている現在とは違い、まだまだ通学には田んぼに面した道を通ることが多かった25年くらい前の、確か僕が小学3年か4年の頃のことだったと思う。
通学途中の田んぼの真ん中に「ばくだん山」(もしくはドーナツ山だったか?)という、真上から見るとドーナツ状になったほんの数メートルくらいの小高い山のような物があって、それについていろいろと子供心をくすぐる噂が飛び交っていた。曰く「なかに爆弾が隠されている」曰く「勝手に入ると爆発する」曰く「恐ろしい番人が中にいる」等々・・・最初は僕らも盛り上がっていたが、次第にだんだんと興味が薄れていった。
その頃は帰宅後友人4人で巨人阪神戦と銘打った野球に勤しんだり、みんな各々漫画を書き、それをまとめて自作コミックを作成したりすること等に夢中な日々、熱しやすく冷めやすいのは仕方の無いことだった。
しかしその頃仲の良かった漫画と野球仲間のひとりO君がある帰宅途中にこう言った。「あそこ入ってみねぇ?」いや、あるいは僕が言ったのかもしれない・・・なにせ25年以上前の話・・・そんな提案に胸の高鳴りを押さえながら、僕は頷いたんだと思う。そして、これは覚えているが晴れた気持ちのいい昼下がり、刈られた後の稲を踏み付けながら僕らはばくだん山に向かっていった。
まぶしい日差しの中、僕らはとりあえず回りを一周し、確認済みの入り口より、今まで感じたことの無いほどのどきどきした気持ちをひた隠しにしながら中に入って行った。
中は想像より狭くこじんまりした感じで、入り口から見て左側に扉の無い小さめのプレハブが一つあるだけで、あとは何も無かった。プレハブの中には広げられ古びた新聞紙が数枚あるだけ。なんだか拍子抜けした感じだったが、とりあえず目標達成の充実感は十分にあった。そして、何も無かったかのように家路へ急いだ。
あとで親に聞いたところ、その田んぼの持ち主の休憩の場所だったとか、花火製造(ばくだん山の由来か?)の個人商店の倉庫代わりだったとかいう話。
しかしそこは小学生、廻りの友達には大袈裟な自慢話をあること無いこと勿体ぶったりして聞かせたりした・・・そんな、ありがちな出来事・・・いや、僕らにとっては決してただのありがちな出来事では無かったのだ。
この出来事は弱虫で泣き虫でひ弱な僕らが始めてトム・ソーヤー的な勇気ある冒険を実行した記念すべき出来事だったのだから。

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