口裂け女対策?

僕が小学生の頃、全国の小学生を震撼させたことがあった。

それはあの有名な都市伝説、口裂け女である。

今思えば、なんであんな噂が全国を駆け巡ったのか?

よくわからないが、とにかくただでさえ恐ろしいその噂なのに、それを煽るように、

当時読んでいたマンガ雑誌にそれを題材にしたマンガが掲載されたりして、

ますます当時の僕らには都市伝説どころか、もうその辺に口裂け女が潜んでいる、

そのくらいに感じるような、そんな思いの日々だった。

特に薄暗い下校時にはその不安が大きくなっていた。

一緒に下校していた友人O君とともに、びくびくしていた気持ちを隠しながら・・・

ご存じのようにその口裂け女は「私きれい?」と聞いてきて、

「きれい」と答えると、マスクをとって裂けた口をみせ、「これでも?」って言ってやられ、

また「きれいじゃない」と答えてもどうやらやられるらしいという・・・

おまけに逃げてもその確か100メートル6秒だったかな?

そんな人間離れした速度だから、逃げ切れずにやられるという・・・

そんな恐ろしい口裂け女に怯える日々だったけど、

ある日の帰宅時、O君が小さい紙切れを自信に満ちあふれた面持ちで見せてきた。

それは地元に根付いているローカル極まりない新聞、その切り抜きだった。

なんだろ?とそれを見せてもらうと、そこには口裂け女に関する記述があって、

なんでも口裂け女の苦手なものが書いてあった。

おお!それは凄い情報だ!とさらに読み進むとその苦手なものがこう書いてあった。

「赤べこ」

・・・え?あの赤べこ?それが苦手?弱点なの?

今現在ググってもそんな記述はどこにも見当たらないし、

もう40年くらい前のことだから詳細は不明だけど、

確かにその地元紙にはそのように書いてあったと記憶している。

だって、その切り抜きを読み終えたとき、O君はニヤリと笑って、

ランドセルの中から「赤べこ」を出したんだから。

思わず「おお!スゲー!」と声を上げ、二人して意気揚々と家に向かった。

これで口裂け女が来ても大丈夫・・・なんて思うも、暫くすると、

あまりにたよりないルックスのそのアイテム、ホントに大丈夫なのかな?

そんな思いはO君も同様だったらしく、「これでホントに大丈夫かな?」なんて言い出す始末。

「何言ってんだよ、新聞にも書いてあるだろ?」

「うん・・・けど・・・」

薄暗い帰宅途中の路地、前にも後ろにも誰もいない・・・

急に、O君が走り出した。

なに?どうした?って思うも、

O君は「やっぱりダメだよ、こんなもん!」

と叫び、走り去っていった。

当然アイテムもなく一人にされた僕も、後を追うように家まで走っていった。

結局、その心強いはずだったアイテム、赤べこが僕らにとって有効だったのはほんの数分だけで、

翌日からはまたびくびくしながらの帰宅となったのであった。





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