チビとの思い出 〜インコ
とある日曜の午前中のことだったと思う。
喜びまとわりつくチビの鎖を散歩用の綱に付け替えるという、チビの散歩時における一番大変な作業をし終えて、いざ道に出ようとした、その時だった。
晴れた休日だったので、母か誰かが、同じく飼っていたインコの入った籠をひなたぼっこのごとく、庭の片隅に置いていた。
その籠に道に出ようとしたチビがぶつかったのだ。
ガタン。
あっ!やばい!
と思うのも束の間。運悪く籠の出入り口が倒れた籠の上部に、おまけに扉が開かれた状態になったのだ。
その刹那、その扉から黄色い小動物が鎖から解き放たれたが如く、すばやく空へ飛び出した。
あー!
確か脇にいた母にチビの綱を預けて、すぐにインコを追った。
必至に走るも、どんどんと高く飛び家々を飛び越していくので、暫くすると私は土手の上で小さい黄色い点になったそのインコを見つめていた。
なんで今日に限って籠を外に出したのか?いや、なんで籠にぶつかったのか?
悔しい思いのまま、家に帰るとチビは鎖に繋がれていて、私を見ると散歩の催促なのか尻尾を振って飛びつこうとしてきた。
仕方ないので、また綱に付け替える一作業を経て、散歩に出かけた。
散歩しながらチビに向ってこう言った。
なんでぶつかったんだよ。
すると彼は私を見つめた。
その表情はこう言っているかのようだった。
「なんかあったの?」
その悪びれない表情を見ていて、ちょっとこんな気がしてきた。
一生籠の中で変われ、そのまま死んでしまうより、大空に飛び立っていけて良かったのかも・・・たとえすぐ自然の厳しさにさらされたとしても・・・まぁ、どっちにしてもそれは勝手な人間のいい分なんでしょうが・・・
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