電話嫌いの始まり

生まれて始めて電話をかけた時の事は覚えていない。
しかし、生まれて始めて電話に出た時の事は今も忘れる事ができない。

もはや何歳の頃の事だったかのかも思い出せないが、30年以上前の、遠い、ある日の夕方の事だった。

たしか、電話のベルが鳴り受話器を取ったら「もしもし○○ですけど、どちら様ですか?」と言い、相手の名前を聞いて、相手の希望の人に取り次ぐ、もしくはその人がいない場合はその旨を伝える・・・そのように答えるよう教わっていた。
だから少しの勇気だけで、今以上に小心者だった当時の私も受話器を取る事が出来たのだろう。

その不幸にも誰もいないある日の夕方、電話のベルが鳴った。
私はドキドキしながらも、どこかでワクワクしながら生まれて始めての電話を受けるべく受話器を取った。
しかし・・・その電話は生まれて始めて電話を受けるチビッコにはヘヴィー過ぎる内容の電話だった。
確か朧な記憶によると、その電話の相手は病院関係か警察関係で、何でも私の祖父が交通事故に遭い病院に運ばれたので至急来て欲しい、というような恐ろしい内容の電話だったのだ。
ついさっきまでのドキドキワクワクがガクガクブルブルにかわり、じいちゃんが死んだらどうしよう、という泣きそうな状態のまま(実際は泣きながら?)、家を飛び出し、近所で夕食の買い物をしているであろう母がいると思われる八百屋へ駆けていった。

不思議なもので、その八百屋へ向う途中の、薄暗い路地とぼんやりと点き始めた街灯などの情景と、母を見つけた時の安堵感は今も心にはっきりと残っている。
結局祖父の怪我はそれほど深刻なものではなかったのだが・・・

しかし、なんでよりによって生まれて始めての電話でそんな内容のものに出なきゃいけないのか・・・

私と電話との相性の悪さ?それはその時が始まりではあったけど、残念ながら終わりではなく、それからも数々の切ない出来事が私を襲い続けたのである。

その辺の話はまたいつかの機会に・・・やれやれ

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