音楽四方山話 〜その2「さらばレコード」

それは僕が大学在学中に起こった出来事だ。

CDの台頭である。

それまで、だいたいの音楽好きはレコードを購入し聴く、もしくはカセットテープに録音して聴くという案配だった。
もちろん僕もそうだった。そしてそれに何の不満もなかった。
そんな僕ら音楽好きの前に登場してきたCD。
当然そんな新しいメディアに興味のかけらもないし、別の世界の問題くらいに思っていた。
しかし、すでにそんな事を言っていられない状況が迫っていたんだと思う。

まず、徐々に日本盤のレコードの発売が減っていった。さらにその新しいメディアに新しいもの好きたちが飛びつき始めた。そうなってくると街のレンタルレコード店などもCDを仕入れ始め、それまでのレンタルレコードを売り始める始末。
徐々にと言ったが、今になって思うと「もの凄いスピードで」と言った方が適切だろう。
そのくらい凄い早さでCDは幅を利かせ始めてきた。
でも、いくら幅を利かせようが日本盤が無くなろうが、輸入盤のレコードを買えばいいので僕には関係ないし、当初は問題はなかった。

そう、当初は・・・

しかし1989年4月、そんな僕にもついにその日がやってきた。
海外のアーティストなら輸入盤のレコードを買えばいい、けれど国内のアーティストだとそうはいかない。
ほとんど洋楽を聴いていて油断していた訳じゃないけど、数少ないレコードが出る度に聴き続けてきた日本のアーティスト、 「ザ・コレクターズ」のサードアルバムが、なんとCDとカセットテープのみの発売となってしまったのだ。

なんてこった!

しかもレコードはないのにカセットはあるってどゆこと?

さすがにこれは輸入盤って訳にはいかない。
悔しい思いのまま泣く泣くバイト代などを切り詰め、今から見れば信じられないくらいしょぼいCDラジカセを、今から見れば信じられないくらい高い値段で購入したのだった。

新しいものに切り替わる時はこういうことが起こるのだろう。残念だがそれは仕方がない。(ちぇっ)

しかしどう考えても、この切り替えが音楽を作るミュージシャン側の希望ではなく、それを販売するレコード会社どもの都合(利益?)によるということが面白くない!
確かに当時はレコードの売り上げが落ちていて、CDにしたら売り上げが上がったなんて聞くけど・・・

しかしだ!そのためになんで僕達が高い金払ってCDラジカセ(CDプレイヤー)を買わなきゃならんのだ!
そっちが勝手にCDに切り替えるなら、こっちもミュージシャンが発表する音楽を聴くための媒体を選ぶ権利があるはずだ!そう、あるはず(実はないようだ)なのに・・・

そんな残念な思いのまま、90年代の半ばまで僕のCD中心の時代は続くのだが、その後地元中古レコード店やインターネットでレコードが得れたり、僕ら同様レコードが好きなのか作品をレコードにてリリースしてくれるアーティストがいたりしてくれたおかげで、現在のレコード中心の音楽ライフに戻れたのだが・・・結局リスナーやミュージシャンよりレコード会社が一番力を持っているから、あの劇的ともいえる切り替えが起こったのだろう。

この件についていろいろな人に話したけど、どうもわかってもらえないというか、非常に温度差を感じる時が多い。
あの切り替えを体験した音楽好きでもそういう人が多かったりする。
それは思うに、レコード自体にさほど愛着がなかった、もしくはCDラジカセ(CDプレイヤー)を入手するのにさほど苦労しないですんだ人なんだろう、多分。
音楽好きでもそうだから、たいして音楽に夢中じゃないひとならなおさらだ。

ところが、音楽好きだろうがなかろうが関係なく、このうだうだ述べてきた僕の気持ちをほどんどの国民に感じてもらえる事態が近付いているようだ。
それは2011年より始まる地上デジタル放送への完全移行である。
チューナーか対応のビデオやテレビを購入しないとテレビ番組が見れなくなるのである!(しかも一台につき一個!)
まぁ、そんな金銭くらい屁でもない人にはやはりどうでもいいことなのかな?やれやれ


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