あわや干乾し!?

思い出すとゾッとする出来事・・・っていうほどじゃないけど、やはり、今改めて思う「Kさん、ありがとう」と・・・気が付けば10年も経つだろうか、当時の職場の2年に一度行われる社員旅行、そのハワイでの出来事。
昼間、海や買い物やいろんなことをして充分遊んだにもかかわらず、夜もまた遅くまで出かけたりする人たちとは違い、私は大人しくホテルで過ごしていた。
けれど、やはり海外旅行の夜、そんな私でも地味なりに同僚や後輩たちの部屋で軽く一杯などと考え、部屋を抜け出した。 そしてエレベーターに向おうとした時、ちょっといい考えが頭にうかんだ。 目指す部屋は一つ上の階、しかし、なかなかの高層のホテルのせいかエレベーターがやってくるのに時間がかかる、それで階段で行こうと思いついたのだ。
「う〜ん、いい考え」(そうか?)と思いながら、その階層の端にあるドアを開ける。 そこは縦に細長いホールのような空間に階段とドアだけある非常階段。「しめしめ」と思い、一段飛ばしで駆け上がる。
エレベーターと比べなんて早いんだ、と思いながら、ドアノブをひねる。
あれ?ガチャガチャ・・・???・・・開かない・・・なんだよ!ちぇっ!鍵が掛かっているのか、残念だが諦めるしかないかと思い、一階下に降りた。
しかし・・・おや?・・・ガチャ、ガチャガチャ・・・開かない??? なんだ?誰か鍵でも掛けたか?なんなんだよ、いったい、とさらにその下の階、同僚後輩のいる階のさらに上の階へ行ってみたが、 どこも開かない・・・ん、この表示・・・そこでようやく気付いたのだが、扉に「CAUTION」だか「WARNING」だか、なにやら警告文のようなものが書かれているではないか!英語が駄目な私でもなんとなくわかった。「そこの非常口は部屋のあるフロア側へは行けないのだよぼんくら君」というような内容の表示。(だったと思う)
どうしよう・・・下半身から力が抜けていくのを感じながら、手すりの間から下を覗き、一階へ行けばと思ったが、一階は遥か下。 う〜ん、こりゃあ、マズイ(冷汗)・・・さらにガチャガチャとくりかえしノブをひねったり、違う階へ行ったりしても同じだったので、改めて最初の階に戻った。

いったい、どうすればいいんだ?私はどうなるんだ?このまま朝になるのか?そして、いない私に気付いて、大騒ぎになるのか?そりゃあかっこ悪い。「助けてくれ〜!」って叫ぶか?それとも「HELP!〜ME!〜」か?でも、それもかっこ悪いし、あっさりなんかの拍子に開いたりしたら・・・いや最悪、誰にも発見されずこのまま干涸びて・・・そんないろいろな考えの中で、一階に行ってみようかな?などと思い始めたころ、冷汗たっぷりでノブをさらにガチャガチャ・・・すると!!!ガチャリ!目の前のドアが開いた!

そこには、Kさんが立っていた。ドアの内側にいきなり私がいたせいか「おぅっ!」とびっくりしていたKさんは「なんだ、へどろん?!」と酔った表情で聞いてきた。 そこで、その戦慄ともいえる焦りから解放された私は、状況を説明したが、酔って上機嫌なKさんはあまり聞いていなかったようだった。 どうやらドアノブがガチャガチャ動くので気になって開けたとのこと。そして何事もなかったように去っていった。
その後ろ姿を見ながら両手をあわせて拝みたいほどの感謝の気持ちを抱いて、今度はエレベーターで上階へ向かった。不思議とエレベーターの待ち時間は長くは感じられなかった。
あの時、Kさんがドアを開けてくれなければ、いったいどうなっていたのだろう。以外と楽に脱出できる方法があったのかもしれない・・・それとも・・・いや、やはりKさんと、動くドアノブが気になったKさんの好奇心にただただ思う、「ありがとう」と・・・しかし、他にもこんな非常階段ってあるのかしら?(疑問?)

もどる

inserted by FC2 system