青春の入り口

小田急線沿線に住んでいた学生時代。校舎の関係で、最初2年間は相模大野駅付近、後2年は経堂駅付近で暮らした。
そのさえなくパッとしなかった学生生活の日々をたまに思い出したりすると、それなりにやはり胸疼くような郷愁に包まれたりする・・・
アパートまでの長い道のり。薄暗い部屋。校舎の隅のたまり場。バイト先での様々な人達と出来事。よくいったレコード店。バイト帰りに寄った友人の部屋・・・充実とはほど遠く、切なさとへんな虚無感に満ちていた僕の学生時代。
そんな、思い返してもたいして面白くもなく、後悔がつのる情けない日々だったのに、なぜかその郷愁は僕の気分を浄化させてくれる美しい宝物ような存在だった。
ここ数年、その郷愁満ち溢れる場所に赴いてみたくなることが多くなった。
特に最近、テレビに映し出された経堂駅を見て、その記憶の中とのあまりの違いに、郷愁どころかなんだかへんな絶望感を感じて、特にその思いが強くなった。
しかし、相手は大都会東京、そして神奈川である。
僕のような田舎者が行ったとしても、いつものように新宿や渋谷などの街に出向くだけで時間が幾らあっても足りない有り様。
もし行ける機会が出来たとしても、どちらか一方に絞るべきなんだろう。
そうした場合、やはり僕は相模大野周辺で過ごした日々を選ぶだろう。
理由?それは、どちらもささやかな楽しい出来事やその逆の切ない思いの日々ではあったけど、一つの違いとして大学一年の頃の、ある女の子との出会いがそこにはあったから。
それは恋愛なんて言う程のものではなく、僕の片想いにもならないような、ささやかな淡い恋心で、あっという間の短い日々だったけれども、その想いの空しくさえない結末よりも、それまでの楽しい日々が僕の記憶の中で美しく輝いているから・・・
その娘と歩いた夕暮れ時の商店街のはずれの道。
その娘を乗せて自転車で走った明け方の薄明るい路地と街灯。
その娘の部屋で聴かせてもらったレコード。
その娘から聞かせてもらった将来の夢のこと。
・・・それらが今でも記憶の中で、その街灯の明かりのように僕の心の中でぼんやりと灯っているから、圧倒的に相模大野の景色に思いを馳せるのであろう。

そしてその頃が、今も、そして多分これからも続くであろう僕の青春の入り口辺りなんだろう。

もどる

inserted by FC2 system