歓喜の雄叫び

高校生の頃、通学には電車を利用していた。
天気が良ければ、自転車に乗って20分ほどのところにあるA駅まで行けたけど、雨や冬の場合、歩いて5〜6分のところにあるB駅から乗り、先のA駅で乗り換えて数駅乗って目的の駅に到着、更にそこから歩いてのぼり道を30分かけて学校にたどり着くといった案配だった。
歩いて30分だったけど、友人NやHと一緒だったので日々楽しく、問題はなかった。
そんな僕の通学状況時において、忘れられない出来事があった。
それは、2年か3年のいずれかの冬のある日のことだった。
いつものように眠い目をこすりながら、吹雪の中家を飛び出した。
とたんに顔や体全体が雪や冷気に襲われた。
「ちぇっ、さみぃなぁ・・・」
その日は、前日からの悪天候でかなりの降雪だった。
でも、残念ながら?都会と違ってこの雪国では少々の雪ぐらいじゃ交通機関に影響など出ない。
その日も期待と違ってほぼ時間通りに、数分遅れくらいで電車はやってきた。
まだ半分眠っている体に鞭打って、僕はなんとか電車に乗り込むことが出来た。

乗客の熱気や雪などの水分が、車内の暖房と相俟って車窓を曇らせ、同時に顔などの冷えた肌にじっとりとまとわりついてきた。
そんな車内で思った。少し遅れて到着したってことは、やっぱりかなり降ったんだな・・・と。

数分経って、A駅に到着した。
いつものようにNやHの待つホームへ行こうと階段を上り始めた、その時構内に放送が流れた。
それはいつもは聞かれない放送だった。
「なんだろう?」
厳粛且つ緊張感溢れる声で駅員さんは複数の学校の名前を読み上げていった。
その中には僕の学校の名前もあった。
そしてその放送は、最後にこう言って締めくくられた。
「〜以上の学校はこの天候のため、本日は休校となります。」

次の瞬間、
「やったー!」、「よっしゃー!」、「うぉー!」などの声が混ざりあった雄叫びが一斉に階段から駅中に響きわたった。

喜びながらNとHの待つ場所に行くと、すでに情報を聞いていたのか、その場所に彼等の姿はなかった。
まぁいいや、と駅から出ると、意外にもバスが動いているではないか。
小走りで積もった雪や消雪パイプの水を避けながら跳ねるようにしてバスに飛び乗り、やれやれと座席に座り、のんびりと家に帰ったのだった。

そんな降って湧いたようなお休みだったのに、家に帰って、ぼ〜っとマンガを読んだり、レコードを聴いたり、テレビなど見て過ごしてしまったのは残念なことだが、相変わらずの悪天候、友人と遊ぼうにも大変だったので、致し方ないことだろう。

それよりも、何の変哲もないちっぽけな駅の構内で、あんな雄叫びの中に加わり、皆とともに叫んだこと。
日常生活上では、コンサートやライブ、スポーツ観戦などのイベント以外では考えられない、一斉に沸き上がった歓喜の雄叫び。
そんな非日常的な光景の中に加われたことが何よりも貴重な体験だったとは言えないだろうか?

ちなみにその貴重な体験をしたその日の休校が、僕の人生に於いての最初で最後の休校だった。


きゃ〜!へどろ〜ん!・・・なんてね。

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