Tony Kosinec 〜トニー・コジネク『バッド・ガール・ソングス』

1948年、イギリスはリーズで生まれたトニー・コジネクはすぐにカナダのトロントへ移住。
若い頃からバンド活動をするも、ソロに転身。
暫くするとトロント大学でイングリッシュ・インストラクターをしていたボブ・サンドラーと意気投合し、二人で曲作りに専念するようになるが、なかなかデビューとまではいかなかった。

トニー20歳の頃、トロントのライヴハウスに訪れていたエリック・アンダースンに自作曲を聴いてもらえるチャンスが訪れる。
ライヴハウス楽屋で自作曲を披露したトニーに、その場に居合わせたあのDJ、マレー・ザ・Kが即座に契約を申し出たのだった。
そして、コロンビアよりデビュー・アルバム『PROCESSES』をリリース。


このデビュー作、トニー自身もあまり気にいっておらず、「自分が何をしているのかわからなかった」「自分の言いたいことはどんどん離れていった」「その場から少しでも早く逃げ出したかった」などと述べている。
個人的にもサウンド・プロダクションの派手な部分が若干気になるこの作品、それでもトニーの才能は充分に感じられるものだったが、やはり今ひとつな感は否めないか?
その後、BS&Tとの全米ツアー、ジョン&ヨーコのベッド・イン・イベントへの参加等するも、たいして目立った成果は上げられなかった。

そんな彼に注目していた男のひとり、ピーター・アッシャーとの出会いがトニーに訪れる。
ピーターとともにロサンゼルスへ向ったトニーは、そこで彼のプロデュースで名作『Bad Girl Songs』を完成させる。70年のことだった。


トニーの楽曲を生かすシンプルなプロデュースは彼のプロデュースした多くのシンガーソングライターの作品同様素晴らしいもの、もちろんトニー自身も満足した作品だった。

個人的にも以前よりお気に入りだったが、昨年秋頃より、よりいっそうこの愛しい作品がプレイヤーを独占することが多くなった。
楽曲、サウンド、演奏、メロディーもそうだけど、素敵な歌詞の世界も必読です。
少し前に紙ジャケット仕様のCDでリリースされているので興味のある人はぜひ御一聴のほどを。

その後、数々のミュージシャンとツアーに出たり、「'48 Desoto」「Me And My Friend」をシングルカットしたり、アルバムも高評価を得たりしたが、セールスが相変わらず芳しくないため等で、ついにはレコード会社との契約が解除されるのだった。

失意のトニーはカナダへ帰国。

折しもカナダで独自のレコード会社が生まれつつあるころで、タイミングよくインディのプロデューサーの誘いでスマイル・レコードと契約することとなった。
そして73年『Consider The Heart』をリリースする。


このアルバムも個人的にはお気に入りだが、やはり前作には少し及ばないかな?
シンプルでどこかユニークなサウンド、シングル「All Things Come From God」のカナダでのヒットなどを得て、これで順調に活動となると思われたが、73年以降沈黙が始まる。

その後は79年にアルバムを作成するもお蔵入り、85年にはカナダのみのアルバムをひっそりとリリースするも、その後の活動状況は不明です。
上記二つの作品、現在は日本でCDが発売されているもよう・・・当方未聴ですが。

現在の彼がどのような活動をしているのかはよくわからない。
しかし、彼がリリースした初期の3枚の作品を、いや最低『Bad Girl Songs』一枚だけでも聴いていれば、それはそれでいいのではないか、なんて思ったりする次第です。この素晴らしい作品、私は大好きです。

もどる

inserted by FC2 system