祖父と最中

生前「穏やかで優しい」というイメージだった祖父が亡くなったのは私が高校生の頃。
ここ近年そのイメージをかき消すようなとんでもない様々な事実を身内より知らされたのは少々残念なことではあるが、それでも先のイメージの祖父が私の中にいることはまぎれもない事実。
でも、いま思い返せばそんなとんでもなさが感じられる当時のエピソードが多々ある、これはその一つ・・・私が小学生低学年の頃のことだったと思う。

祖父の誕生日もしくは敬老の日に私は祖父のためにと思い、祖父の好物の「最中」を一つプレゼントした。
孫のそんな可愛らしい行為に祖父も喜んでいたことと思う。
祖父はその受け取った最中をすぐとなりの茶箪笥に置いた。
?・・・多分に私はなんで食べないのかという旨を聞いた。
すると祖父は「勿体ないのであとで大事に食べる」と、いかにもお年寄りの言いそうなことを言った。
私は何となく納得し、その場はそれで終わった。

それから、しばらく気にも止めていなかったが、ある時ふと気付いた・・・最中、まだある・・・でもまだ数日たっただけだったので、あまり気にせずにいたけれど、さすがに1週間、十日、2週間と日が経ってくると最中の存在というより鮮度の方が気になってくる・・・大丈夫かな?と。
そんな不安で気になる状態の最中だったが、ある日の夕食後、ついに最中に祖父の手が伸びる時がやってきた!
あぁ、ようやく食べてくれる、でも最中大丈夫かな?という私の不安に気付いたのか?祖父は私を見つめてきた。
しかし、祖父の口から出た言葉は最中の鮮度への不安なんか関係ない、私の不安とも一切合切関係ない一言だった。
・・・「これ、食うか?」・・・って、おい!

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