あわやのび太?
大学のキャンパスの端にあった、
どう見ても大きめのプレハブ?といった出で立ちの休憩所なる場所。
そこはほとんどの学生がたむろする二つの学生食堂から溢れたような、
もしくは学食のやたらと混雑してる状態、雰囲気が好きじゃないものが集まってくるような、
夏は暑く、冬は寒いけれど、騒がしくもなく、人もそんなにいない、なんとも居心地がいい場所だった。
いつものように、授業と授業の合間の空き時間に、休憩所に赴くと、同じサークルの仲間が数名いた。
だらだらと緩慢な動作でタバコの煙を吸い込む奴や、ヘッドフォンから流れる音楽を聴き入ってる奴、
何をするでもなくくだらないことを話している奴ら、そんな輪の中に加わった。
音楽の話などを中心に、たいして実のあるとは思えないことをいつものように話していたら、
話はいつの間にか近々行われるテストのことについて変わった。
その話の中で、友人の一人がこんなことを言った。
「小学校の頃のテストは簡単で良かったよな」と・・・
回りの友人達は同意していたけど、小学生の頃から、その頃も、今現在もぼんくらな自分は、そんなに簡単だったかな?
なんて思っていたけど、その場ではきっと薄ら笑いを浮かべていたんだろう。
あることを思い出して胸を疼かせながら・・・
多分に小学生の3、4年の頃だったと思う、
前日に行われたテストが返された。
順番に呼ばれ、皆それぞれいろんな表情を浮かべながら、返されたテストを見ながら席に着いた。
もちろん自分もテストを受け取り、たいして期待をしないで、テストを見た。
すると、そのテストには初めて見る点数が書いていあった。
「0点」と・・・
れ、れいてん!零点!?0点・・・
まさかとは思いながらも、やはりそこに記してある点数は0点。
頭は悪いとは思っていたけど、まさか0点だとは・・・
そんな驚愕の点数を見ている自分の表情に気が付いたのか?友人がテストを覗き見て、
「0点かよ〜♪」と冷やかした。
やばい!見られた!と思うも、その友人の点数も確か20点。
冷やかしながらも、ニヤニヤしていた友人は自分より下がいて喜んでいるって感じだった。
その時、視界の端に気になるものが見えた!
「ちょっと見せて!」と言い、その友人のテストを見た。
するとどうだろう?友人の2か所の正解箇所が自分が記した回答と同じなのだ!
こりゃ、0点脱出、下に見られた友人と同じになると思い、
すぐさま、教壇を見た!
すると、既にテストを配り終えた先生は教室からいなくなっていた。
速攻、教室を飛び出し先生を追いかけた。
廊下の先で追い付き、テストを見せて諸々を説明した。
当然、先生はテストを受け取り、2か所に丸を付けて、0点を20点に書き換えた。
やれやれ、よかったよ、と思ったその時だった、
先生がテスト返し、踵を返しながらこんなことを言ったのが聞こえた。
「字が下手でわからんかったわ」
え・・・
確かに字は当時も、もちろん今も下手なんだろう、
でも採点を間違えたのは間違いなく先生の方、
しかも間違えられたせいであわや0点になるところだったのにそんな言われ方・・・
幼い頃のこういうショックな出来事っていうのは、かなり心に残るもので、
それから30年以上経った現在も、その時の薄暗く冷たい廊下の雰囲気、
離れた教室から聞こえてくる皆のざわめき、なんとか20点になったテストのよれよれの感じ、
先生の素っ気ない上記の台詞などがはっきりと胸に残っているんです。
しかし、あわや0点って…のび太じゃないんだから…
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