パスタはいかが?

ある日の夕食時のこと、友人とともに「パスタでも食うか?」ということになった。
しかし、その辺りには僕らが好きなパスタ屋のチェーン店○○はなかった。
困った僕らだったが、いくらなんでもパスタ屋は沢山あるので、問題は無いだろうと思い、その辺をうろうろしながら探していた。
あそこはどうかな?その店はどうだ?なんていいながらも探せど探せどピンとくるお店に出逢えなかった、というかよく解らなかった。
そこで、苦渋の決断っていうか、もう仕方ないので、その辺りに出来たばかりの大型ショッピングモールの中ならばパスタ屋などいろいろなお店があるだろうということで、その大型ショッピングモールに入ることにした。
僕のような田舎者でレコードくらいしか興味の無いものには身を持て余すその巨大なショッピングモールの中を、僕ら二人はレストラン街に向って歩みを進めた。
運良く?いや運悪く?だろうか、ともかく当初の僕らの欲望をかなえてくれると思しきパスタ屋がそのレストラン街にはあった。
それでも虫の知らせってわけじゃないが、何かピンと来るものがなく、他の店などを再度見回しながらも、他の店も同様にピンとこなかったので、改めてそのパスタ屋に戻ってきた。
どうしようかな・・・って悩んでいる僕らの背中を押すべく、店員さんが「いらっしゃいませ〜」と誘ってくれた。
テーブル席に座り僕らはそれぞれ注文をした。
そして暫し待つとパスタが運ばれてきて、僕らはようやく当初の欲望をかなえることができた。
しかし、先ほどの虫の知らせとは違うがある予感どおり?味普通、量少なめ、雰囲気普通のそのお店、たいした満足感は得れなかった。
まぁ初めて入るお店だしこんなことも多々あるだろうし、これも授業料と考えそのお店を出ることにした。
伝票を持って、レジにて料金を払おうとした、その時に、まぁようやく本題であるが、衝撃の一言を店員の口より聞くことになった。

その店員さんは僕にこう言った。

「料理の方はいかがでしたか?」

その刹那、僕の中には(いかがって・・・味普通、量少なめ、雰囲気普通、なんて言えないよな・・・この店はこの程度ってわかった、なんてのもまずいし・・・もう来ることは恐らくないでしょう、ってのも当然うまくない・・・)などいろいろ浮かんでは消えたけど、実際僕の口からは

「えっ?ええ、まぁ・・・」(苦笑)

と誤魔化すことしかできなかった。

いったいどういうことだろう?
そこはイタリアのパスタ屋で、僕はそこに訪れた常連客か?
それとも都会の洒落たイタリアンレストランに訪れたセレブな客、もしくは料理評論家か?
もちろんそんなことはなくて、そこは日本であり、そのお店はチェーン店であって、新潟県内の大型ショッピングモールに店を構えているパスタ屋である。
いや、別に客にそういうことを聞くのは自由だと思うし、ひょっとして客によってはいいコミュニケーションが取れるかもしれない。

でもあえてこう言わさせて欲しいのだ。

「客に金ばかりか、気まで使わせるなよっ!」と。

そんなこと聞かれてフランクな欧米人よろしく素敵に対応できる人は少ないだろう・・・まぁそうなれれば問題は無いだろうけど。
後日、その店の前を通り、レジのほうを覗き込んだら、僕ら同様に「えっ!・・・」みたいなリアクションをされていたお客さんが見えました。
恐らくその後も、そして今この時もそんな被害者が出続けているのでしょう・・・やれやれ




「ちょっとシェフにご挨拶を」・・・なんてね。

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