プロレスの思い出 〜最初で最後の経験?

小中学生の頃、プロレスに夢中だった。

当時ゴールデンタイムなどで放映されていたテレビ放送はもちろん、学校ではクラスメイト達とプロレスごっこ、技の掛け合い、またはその話題などで熱く語り合ったり盛り上がったりしたものだった。
そんな僕らの住む田舎にも有り難いことにプロレスの興行がやってくることがあった。
当然僕らはその一大イベントに備え、あるものはお小遣いを貯めたり、親にねだったり、親のコネを駆使したりして?なんとかそのイベントに参加するべく対策を立てていた。
そんなプロレス観戦何回目かの観戦後の出来事である。
一緒に観戦した友人が観戦後にこう話し出した。
「○○ホテルに選手たち、泊まるらしいぜ」
「まじ、近くじゃん」
「うん、で前回その辺りで見かけたなんて話もあるらしいぜ」
「へー、すげーなぁ・・・」
するとその友人はニヤリと笑い、こう言った。
「いってみようぜ」
もちろん二つ返事でその話にのった僕は友人とともに自転車を飛ばし、そのホテルがある繁華街に向った。

繁華街の中心にあるそのホテルのそばに行くと、すでに僕ら同様プロレスの選手を今か今かと待ち続けている少年達がそこかしこにいた。
僕らは彼等から少し離れたところに位置し、状況を見守った。
すると、早速ホテルの入り口から何人かが出てくるのが見えた。
まわりの少年達とともに僕らもホテル入り口に向いかけたが、残念ながらただの通常のお客らしい団体だった。
また、しばらくするとホテル向いの飲み屋の入り口が開いた。
同様に皆前のめりになるも、これまた普通の酔っぱらったおじさん達だった。
こんなことが何回か続いて、ほんとにいるのかなぁ・・・
と思い始めた、そんな時だった。
向いの奥まったところにある寿司屋から、一目でプロレスラーだとわかる大きな体躯をした二人が出てきた。
「おー!来たぞ〜!」
と僕らとまわりにいる少年達はその二人に向っていった。
記憶が確かなら、その二人は当時全日本プロレスに参戦していたケリー・フォン・エリック(以下ケリー)とバッドニュース・アレン(以下アレン)の二人だった。
当然・・・っていうか今となってはどちらも魅力的だが、当時は悪役のアレンじゃなく長身で長髪のケリーに皆群がった。
うすのろな僕は案の定というか出遅れたため、ケリーに群がる群衆の一番後ろにいた。途中で買ったのか家に帰って持ってきたのか覚えていないが、皆同様に色紙とマジックを持って・・・
(こりゃあサインしてもらえないかなぁ・・・)と思っていたら、あまりにサインをほしがる少年達が多く群がったためか、それともかなり酔っぱらっていた感じだったので面倒だったのか、ケリーは身ぶり手ぶりで「ノー・コンナニタクサン・サイン・デキマセ〜ン」とサインをほしがる少年達を一掃した。
なんだよー!とばかりにそれまでケリーに群がっていた少年達は一気にアレンに群がった。
すると、僕とケリーの間の群衆がすっぽりといなくなったため、僕とケリーは向かい合う格好になった。
おずおずと色紙と、初めての経験だったためキャップを締めたままのマジックを、ケリーに差し出してみた。
すると一人ならいいと思ったのか、手間どりながらもキャップを外し、酔っているせいかかなり怪しい書体でサインをしてくれたのだ。
となりではその風貌とは違ってフレンドリーなアレンが皆にサインをしていたけど、ケリーが僕にだけサインをしてくれたのを見ると、アレンに群がっていた少年達はまた一気にケリーにサインを求め始めた。
しかし、ケリーは皆に軽く手を振り、怪しい足取りで立ち去ってしまった。

いいなぁ、と友人と少年達にうらやましがられた僕は嬉しさもひとしおだった。
なんたって有名人にサインを直接貰うなんて初めて・・・いや最初で最後?の経験だったのだから。多分ね。





俺のサインじゃ不満か!?

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