悲しみの入院食

私が始めて入院したのは小学校3年生の時だった。
それは肺炎によるもので、入院する直前までは1週間、入院したら2週間とのことだったが、結局最終的にそれは3週間にも及んだ。
その3週間に及ぶ入院期間は、すでに20数年前のことなのでほとんどぼんやりとしたものになっているが、 それでもいくつかは記憶の深い部分に居座っている。
クラスメイト皆による千羽鶴(千羽なかったそうだが)、O君による人気マンガのイラストのお見舞い、点滴を外した部分の膨大な垢・・・これらはそのモノトーンな記憶の中で若干明るい色合いを発している思い出・・・そしてそれら以上にはっきりと覚えている少々残念な思い出がある。
それは不味かった入院食についてのこと。
入院当初より、子供用の入院食を与えられ続けていたのだが、当時はすでに10歳になっていた私。
子供用の入院食の主食の「おかゆ」より、大人用の入院食の「ごはん」が食べたいと思うのが当然ではないか?
そこで、母親経由で入院食の大人用への変更をお願いしてもらった。
そのおかげでか不味い入院食も多少は美味しく食べられるようになり若干不満は薄まった。
そんな思いの入院食変更初日、ふと同部屋の私より年下の入院患者の入院食を見て、私は愕然とした。
朧な記憶によると、入院食は子供用と大人用では主食以外ほとんど差異はないと勝手に思い込んでいたのだが、それがまだ他にも差があったのだ。
その同部屋の子供の入院食には、デザートであろうと思しき『プリン』が添えられてあったのだ。
もちろんどう探しても私の入院食にはそんなものはついてなかった。
「マジかよ〜」・・・いや当時だから「ガッビ〜ン」だろうか?笑
さすがに変更してもらったその日すぐに、『プリン』を理由に再度急遽変更なんて言い出せるわけでもなく、
とても、そして非常に悔しい思いをしながら、嬉しいはずであった大人用の入院食をしょんぼりしながら食べたのであった・・・
たかが『プリン』? いやされど『プリン』である。
この時の残念な気持ち、今これを御覧のあなたも10歳の頃の気持ちを少しでも思い返してもらえると、
ご理解してもらえるのではないかと思いますが、いかかがでしょうかね?

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