スキー場での初体験

何年も前の、スキー場の食堂にいた時のこと。

友人と昼食をとりながらゲレンデを眺めていた。

混雑する食堂の中は、暖房のせいで暖か過ぎるくらいで、

ウェアを椅子の背もたれにかけて、緩慢な動作でカレーやラーメン等を食べていた。

たいしたことのないはずのスキー場のカレーやラーメンはなぜ美味しく感じるんだろう?

なんて思っていると、眼前の眩しいくらいのいい天気の、白銀のゲレンデの隅を、スノーモービルが登っていくのが見えた。

すると友人がこう言った。

「あれ乗ってみてぇな♪」

すぐさま自分はこう言った。

「俺乗ったことあるよ。」

窓の外から視線を自分に移し、

「え、うそ?いつ?」

と友人が言ったから、食事を続けながら事の顛末話すはめになった・・・


あれは、今から、いやその当時からもかなり前のことで、多分に自分が小学生の頃のことだった思う。

初めてのスキー。

確か父と弟と3人で、妙高のスキー場に一泊で行った時のこと。

ただでさえ運動神経が悪く根性なしの自分がスキーなんか出来るのだろうか?という不安でいっぱいだったけど、

父が教えてやるっていうので、それをあてにしていたけど、今こうして大人になって改めて、人にものを教える難しさ。

まわりの大人達は、一回ささっとやってみせただけで、教えた気分になっていたりする輩が呆れるくらい多いから、その難しさはやっぱり並大抵のことじゃないのだろう。

しかも、残念ながらそのあてにしていた父の教えも、今思い出しても、頼りないものだった。

結局、滑らなきゃ始まらないとかなんとか言われ、初めてスキーを履いた自分はいきなりリフトに乗せられた・・・

予想どおり、転びながら、それこそ1メートルごとに転ぶくらいに転んで、麓に降りたら、まわりは薄暗くなって、

その日の滑りはもう止めようっていう、そんな酷い初日だった・・・

次の日、その頼りない父の教えがよかったのか?若いから上達が早かったのか?わからないが、

前日の転倒の数々が功を奏したかのように、ボーゲンでなんとか、ゲレンデを降りて来られるようになっていた。

もちろん相変わらず何回かは転んだけど・・・それでも、晴れたゲレンデを、自分では颯爽と滑り降りる、その気分のいいこと。

そんな何回目かの滑降のある時、また転倒した。

いってぇ・・・ん?

転んだ時にスキーが足にもつれてウェアの膝のあたりがちょっと切れていた。

あ〜あ、まぁ数センチだからいいか・・・ん?

その時、膝部分になにか水のようなものが伝わるのを感じた。

きっと、破れた部分から入りこんだ雪かな?と思うも、その破れた部分から見えたのはなんと「血」。

とくに痛みもなく、切れたキズも確か3〜4センチだったけど、どうにも血が止まらない。

するとちょうど父が来たので、その旨説明した。

父は、スキーとストックを外させて、ゲレンデ脇に突き刺し、「ちょっと待ってろ」と言い、麓に向かって滑って行った。

どうなるんだろう?と思ってしばらく待っていると、なんということか!

麓からスノーモービルが自分に向かって来るではないか!

嘘?マジかよ・・・

スノーモービル到着後、運転手の指示どおり運転手の後ろに乗り、

ゲレンデにいる皆に見られて穴があったら入りたい状態のまま、麓に向けて出発。

どこかの診療所的な場所で応急処置らしきことをして、

結局スキーは中止、家路に付いたのだった。


ここまでかいつまんで話すと、友人は「そんなことで乗りたくはねぇよな・・・」と、至極当たり前のことを言ったが、

そんなことより、今となっては根性なしの自分がよくそれでスキーを止めずに、それからもスキー、スノーボード等を楽しんだのか?

それが不思議なんだよね・・・





画像のスノーモービルはイメージです♪

もどる

inserted by FC2 system