ヴァシュティ・バニヤン(Vashti Bunyan)来日! 〜田舎者のライブ体験記

なんだか朝から落ち着かないようなそわそわした気分だった。
そんな3月1日は待ちに待ったヴァシュティ・バニヤンのライブの日。
準備万端で午後1時23分発の新幹線に乗り込む。
車中でまずい弁当を食べたあと、うとうとしながら考えた。
帰りは新幹線で帰って来れるのか?それとも夜行バスに乗るはめになるのか?
翌日も仕事のため、出来れば新幹線で帰れれば・・・でもそんなことばかり考えてライブを見ていると、気になって興ざめ甚だしい。
おまけにすでに行なわれた大阪公演の情報によるとライブ後にサイン会なるものが開かれるようだ。
なので、基本夜行バス、余裕で帰れる時間に終われば新幹線と思いながら、そのまま寝入ってしまった。
いい天気の中、新幹線は一路東京へ向う。

東京駅到着後山手線に乗車、その時午後3時半頃。ライブ開場までは約2時間ある。
もちろんレコード大好きな僕は新宿、といきたかったが2時間くらいじゃあっという間。
なのでここは渋谷に行き、ディスクユニオンとレコファンを見ることにした。
そこでの収穫は短時間のせいか、たいしたことはなく、中古は2枚あとは新譜4枚というものだった。
その後時間が近付いたので、恵比寿駅に向った。

恵比寿駅到着後、コインロッカーを探しレコードなどの荷物を入れて、ライブ会場となるリキッドルームへ向った。
手書きの地図を見ながら、暫し歩いているとあっさりと到着。
開場時間の午後6時半の10分くらい前だったが、すでにそこそこの人たちが集まっていた。
ライブを見にくる皆が当然持っている、サイン会用と思われるヴァシュティのCDが陳列された場所付近をうろうろしたり、脇の椅子に腰を下ろしたりしていたら、開場時間となった。

会場内に入り、最前列に向う。
すでに両サイドと後方にある椅子席と最前列は陣取られていたので、最前列中央に近い場所を陣取った。
暫しドリンクなど飲みながら待つこと・・・長い・・・ここからが長かった。
実際開場時間の午後6時半から開演時間の午後7時半まで、その1時間の間ず〜っと立ちつくし待ち続ける僕、まわりの人たち・・・それで椅子席が先に埋まったのか・・・
座ることも何かで暇を潰すことも出来ず、ただただ待つだけ・・・辛かった。
待っている間に僕は決めた。最終の新幹線は午後9時40分東京駅発、逆算すると9時が目安となる時刻なので、ライブ終了時刻が9時過ぎていなかったら、最終の新幹線に乗りゆったりと帰る、9時をまわっていたら夜行バスに乗って窮屈な思いをして帰る。でもただ夜行バスで帰ると辛い最後になるので、その時はサイン会に参加して帰ろうと・・・そうすればどちらに転んでもいいだろう・・・これでもうライブ終了時まで帰宅方法について考えないことにした。
そんなことを考えていると、開演時間をまわったようで、2人の外人さんがステージに現れ、チューニングやらなんやらやりだし、「いよいよかな?」って雰囲気になり、1時間立ちつくしっぱなしの辛さがふっ飛んできた。

そして、ついに待望のヴァシュティの登場である。
彼女を中央に、他のメンバーは先ほどギターのチューニングをしていた男性が向って右側に、ピアノ、アコーディオン、フルート、カリンバなど担当の女性が向って左側の計3名。
割れんばかりの拍手と歓声の中、ついに演奏が始まった。
1曲目の「Hidden」のイントロ〜ヴァシュティの歌と聴こえてきたとき、鳥肌がたったが、そんなのは感動の入り口に過ぎなかった。
曲の前にその曲紹介をするヴァシュティ、「あ〜、英語が分かれば!」って感じだったが、歌同様穏やかな語り口調だったので大意はわかったつもり・・・
自然や動物や家族、友人について歌った歌とか、音楽ビジネス界に失望し傷付いた頃の歌とか・・・ああもっと理解できれば・・・
2枚のアルバムからほぼ均等に演奏され、途中他のメンバーのソロ曲を1曲ずつをはさみ、さらにライブは続いていくが、その辺の詳細なライブ・レポートはリンクさせてもらっているjiroweさんのサイトや他のサイトを参照してもらうとして、そのまま素晴らしい歌声を、演奏を満喫していると、ヴァシュティの口から「Last」という曲紹介が聞こえ、思わずへんな奇声を発してしまった。
そのラスト・ナンバー「Wayward」が終わり、ヴァシュティ達が引っ込むと当然のようにアンコールの催促が始まり、結局アンコール2回計3曲でライブ終了となった。
大阪公演で披露されたらしい「Rainbow River」や大好きな「Swallow Song」などやらない曲もあったけど、そんなのも帳消しにする素晴らしい歌声、演奏。そして想像以上にチャーミングなヴァシュティだった。


ライブが終わった感動につつまれながら時計を見た。
その時、8時57分頃。
「よし、新幹線で帰れる」
そうと決めたら急いで・・・とサイン会の長蛇の列に後ろ髪を激しく引かれたが、どちらにしても想像以上の列の長さ、時間によっちゃあバスもヤバいかも?
なので、サインではなく、サポートメンバーの女性のCDを購入し慌ただしく会場を飛び出した。

たしか恵比寿駅9時12分発の電車があったよな・・・と思いながら、僕は恵比寿駅まで走り出した。
いい天気の東京の夜、僕は思った。
音楽が好きで良かった。
そんな思いを今までにないくらい強く思わせてくれたヴァシュティ・バニヤンのライブ。
僕は強く感謝した。ヴァシュティに、サポートメンバー達に、関係者達に、共に感動したライブ体験者達に、もちろんがんばって田舎から出てきた僕に。

結局、上京してから東京を発つまで約6時間の短いものだったが、短いながらもその時間は十二分に文句のない素晴らしい濃密なものだった。
最後に、もう一度言わせてもらおう。音楽が好きで良かった。ヴァシュティ、みんな、ありがとう。



もどる

inserted by FC2 system